短時間で廻るバチカン美術館の見学コース!

イタリア

ローマ観光で外せない観光スポットの一つがヴァチカン美術館。
だけど限られた時間で、ほかの観光スポットへも行きたい・・・という人が気にする所要時間。

今回は、5月の観光シーズンの最終日曜日に無料でヴァチカン美術館を見学してきました。
美術館の様子や混雑状況を含めて、短時間で廻る美術館の見学コースを紹介します。

バチカン美術館について

バチカン美術館は、世界で一番小さな国バチカン市国にある世界で一番大きな美術館です。
500年以上の歴史を持ち、20以上の美術館から形成されていることから
Musei Vaticani (ムゼイ・ヴァティカーニ) という美術館の複数形で呼ばれており、
美術館の展示室は1000以上、館内の所蔵作品数も15万点を超えるといわれています。

美術館の公式の館名は、教皇の記念物・博物館ギャラリーといわれ、
古代(ギリシャ・ローマ)彫刻、エジプト美術、エトルリア美術、現代キリスト教美術のほか、
ミケランジェロの壁画で知られる”システィーナ礼拝堂”、バチカン図書館、
中世の教皇庁の建物の一部“ボルジア家の間”、”ニコラウス5世の礼拝堂”、”ラファエロの間”
などが見学コースとなっており、このコースを見学するには4時間以上かかります。

見学の前に知っておくこと

美術館の入り口では、セキュリティーチェックがあります。
どこの美術館でもそうですが、入場の為の長蛇の列は、このセキュリーティーチェックが原因です。

今回は、チケットを買う必要がない無料見学の日に訪れましたが、
有料の日はチケット購入時に少し時間がかかります。

ただ、チケットを事前にオンラインで購入しておけば、チケットを持ってない人と同じ
セキュリティーチェックの列に並ぶ必要がなくなり、時間が短縮できるという特権があります。

vatican museum vatican museum

チケットの改札機を通り、エスカレーターかスローブで上階へ向かいます。
オーディオガイドのレンタルとトイレが入り口付近にあるので、こちらで見学前の準備をしましょう。

vatican museum

入場した正面にはテラスがあり、右側がピナコテカ(絵画館)、左手がピオ・クレメンティーノ美術館側
へと別れています。 テラスからは、ヴァチカン美術館の手入れされた庭やサンピエトロ大聖堂の
クーポラをバックに写真が撮れる撮影スポットになっています。

vatican museum

見学コースについて

今回は、1時間半~2時間ほどで廻る見学コースを紹介します。

キアラモンティ美術館 ≫ピーニャの中庭 ≫ピオ・クレメンティーノ美術館 ≫燭台のギャラリー ≫
タペストリーのギャラリー ≫地図のギャラリー ≫ラファエロの部屋 ≫ システィーナ礼拝堂

時間に余裕のある人は、ピオ・クレメンティーノ美術館の前にピナコテカ(絵画館)、
エジプト美術に興味のある人は、ピオ・クレメンティーノ美術館の後にエジプト美術を見学してから
地図のギャラリーへ行くのもいいと思います。

ちなみに、おすすめコースは、ピナコテカ(絵画館)を最初に入れて、ピオ・クレメンティーノ美術館 ≫
地図のギャラリー ≫ ラファエロの部屋 ≫ システィーナ礼拝堂の3~4時間コースですが、3~4時間も
美術館の中を歩くのは体力も必要なので、ラファエッロとミケランジェロが見れればそれで良しというなら、
今回紹介する1時間半~2時間ほどで廻る見学コースでいいと思います。

まずは、キアラモンティ美術館を通り中庭へ

教皇ピウス7世が収集した、1000点にも上る古代彫刻コレクションが展示されている
キアラモンティ美術館の展示スペースは、教皇宮殿とベルヴェデーレ宮を結ぶ長い廊下にあります。

ピーニャの中庭 (Cortile della Pigna)

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ピーニャの中庭という名前は、コンスタンティヌス帝の旧大聖堂の玄関を飾っていたブロンズの
松ぼっくりがこの中庭に置かれていることが、この中庭の名前になっています。

ピーニャの中庭の中央にある球体は、「球体の中の球体」イタリア彫刻家・アルナルド・ポモドーロ氏の
作品で、1990年にこの中庭に設置されました。
中庭にはカフェやベンチがあるので、ここで休憩もできます。

次は、2階のピオ・クレメンティーノ美術館へと向かいます。

ピオ・クレメンティーノ美術館 (Museo Pio Clementino)

ピオ・クレメンティーノ美術館は、ベルヴェデーレ宮殿の中庭である「八角形の中庭」を中心に
12の展示室で構成されており、古代ギリシャ及びローマ時代の貴重な彫刻が展示されています。

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八角形の中庭の一角には、紀元前1世紀に大理石で造られたラオコーン群像。

ギリシャ神話に登場する「ラオコーン」が、敵国の神の怒りをかったために、2人の息子と共に
二匹の大蛇に絞め殺される様子が表現されています。

ロドス島の3人の彫刻家により紀元前2世紀に造られたとされるラオコーン像は、
旧ドムス・アウレアのあったローマのエスクイリーノの丘で1506年に発見されました。

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部屋の中央に設置されたたくましい彫像は、ベルベデーレのトルソ。
紀元前1世紀のもので、ミケランジェロをはじめとするルネッサンスの芸術家から賞賛を浴びた作品。

岩の部分には、「ネストルの子、アテネのアポロニオスの作」と彫られており、
胴体部分だけが存在するが、たくましい胴体と太ももの上の動物の頭からヘラクレスと判断されています。

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この円形の間は、ローマのパンテオンを意識して造られており、
ブロンズ鍍金のヘラクレス像をはじめ、ツタの冠をつけたアンティノオスの巨像、
トーガをまとったアウグストゥスの守護神などが部屋の壁を飾っています。

床は、オトリコリ出土のギリシャ人とケンタウロス族の戦い、ネイレスやトリトンと海獣の
古代モザイクで飾られ、中央にはネロ帝のドムス・アウレア(黄金の家)で発見された、
一枚岩の斑岩でできた円周13メートルの巨大な水盤が置かれています。

すいていたので、エジプト美術館へ寄り道します

エジプト美術館 (Museo Gregoriano Egizio)

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エジプト美術館は10室からなりますが中規模な美術館で、それほど有名な作品はありませんが、
時間がかからないので、エジプト文化に興味のある人はざっと流して見学してみてください。

ラムセスⅡ世の像の座る玉座(紀元前1250年頃)をはじめ18世紀末の歴代教皇が収集したエジプトの美術品、
ミイラの棺、副葬品、帝政ローマ時代の彫刻など様々なコレクションが展示されています。

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エジプト美術館を出て上階へ上がると、古代彫刻が展示されている長い廊下の展示室に入ります。

燭台のギャラリー ≫タペストリーのギャラリー ≫地図のギャラリー ≫と長い廊下の展示スペースを通ります。
ここは、ラファエッロの部屋に続いていて、システィーナ礼拝堂へ行くためには必ず通り展示スペースです。

燭台のギャラリー (Galleria dei Candelabri)

この燭台のギャラリーは、部屋の入り口に燭台が置かれていることからこの名前がつきました。

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地図のギャラリーへと続くこの長い廊下は、6つのセクションに分かれており、
ギャラリーの左右に並ぶ石棺や彫像の殆どが紀元前3世紀~6世紀、ギリシャ時代に造られた
オリジナルをローマ時代に模刻したものです。

タペストリーのギャラリーを通って地図のギャラリーへ

地図のギャラリー (Galleria delle Carte Geografiche)

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地図のギャラリーという名前からもわかるように、天文学者「イニャーツィオ・ダンティ」の下絵を元に、1580年から3年間かけて描かれたイタリアや教皇領を示す40の地形図が描かれています。

この地図は、当時の最新テクノロジーと科学を用いて制作されたもので、16世紀の地誌と地図作製法の
きわめて重要な記録とされる貴重なものです。大型の地図は、幅6m、長さ120mという立派なサイズです。

地図も素晴らしいですが、このギャラリーの金で装飾された天井はとても華やかで印象的です。
この天井の装飾を手掛けたのは、ローマのサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会の装飾に携わった
芸術家ジローラモ・ムツィアーノ氏とチャーザレ・ネッビア氏です。

このサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会では、バロックの先駆者カラヴァッジョを一躍有名にした
「聖マタイの召命」を見ることができます。

地図のギャラリーを抜けて「 無原罪のお宿の間」を通りラファエッロの間に向かいます。

ラファエッロの部屋 (Stanze di Raffaello)

ラファエッロの部屋は、【コンスタンティヌス帝の間】、【へリオドロスの間】、【署名の間】、
【火災の間】の4室からなり歴代教皇の公的な部屋として使用されていました。

コンスタンティヌスの間は、4室の中で一番最後に完成した部屋で、ローマ皇帝・コンスタンティヌウス帝
の生涯をテーマにして、ラファエロの死後に主に弟子達が手掛けた部屋です。

へリオドロスの間

ヘリオドロスの間は、「宮殿から追放されるヘリオドロス」の画に因んでつけられた名前で、
教皇がプライベートルームとして使用した部屋です。

1512年から1514年のラファエロ生存期間中に制作さているので、彼の特徴が強くみられます。

聖ペテロの解放

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ヘロデ王によって投獄された聖ペトロが、天使の出現により鎖を解き放たれ、牢屋から救出される場面を
描いたもので、光と闇のテクニックが使われています。

これは、ラファエロ自身の作品です。

 

大教皇レオとアッティラの会談

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北アジアの遊牧騎馬民族フン族の王・アッティラのローマ侵攻を、教皇レオ1世が停戦交渉によって
食い止めた場面が描かれています。

この作品は、ラファエロの死後に弟子たちによって描かれたものです。

署名の間

署名の間は、教皇が公式文章に署名する書斎であった事にちなんでおり、
ラファエロの間で最初に完成した部屋です。

20代のラファエロは、1509年から3年を費やし真・善・美をテーマに、
この部屋の大部分を一人で手掛けたそうです。

中でも「アテネの学堂」は、ラファエロの生涯の中でも傑作といわれる作品です。

アテネの学堂

 

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アテネの学堂は、50人以上の古代ギリシャ・ローマ時代の偉大な哲学者や科学者たちが集まり、
議論をしている場面を描いた作品です。

背景の建物はサン・ピエトロ大聖堂をモデルにしたという説があります。

中央のアーチの下に、赤い布をまとった哲学者プラトン(左)とアリストテレス(右)。
プラトンはレオナルド・ダ・ヴィンチをモデルにしたそうです。

プラトンは知識の源としての最高点である天を指さし、アリストテレスは物理の確実性を示す様に
地に手をかざしています。

左手前の肘をついて薄紫の服を着たヘラクレイトスは、ミケランジェロをモデルにしています。
このヘラクレイトスは、後で付け足されたもので、これを描くために全体の構図を変えたといわれています。

そして、サンピエトロ大聖堂を設計したブラマンテも古代エジプトのギリシャ系数学者兼天文学者のユークリッドとして描かれています。

ブラマンテは、教皇ユリウス2世にラファエロを推薦した人物です。

最後に、ラファエロの自画像も右手に黒いベレー帽をかぶった人物として登場しています。

火災の間

火災の間は、教皇の食堂として利用されていた場所です。ユリウス2世の後を継いだメディチ家出身の
ローマ教皇レオ10世の依頼で1514年~1517年にかけて制作されました。

ボルゴの火災

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9世紀、バチカン近くのボルゴ地区で発生した大火事を、教皇レオ4世が十字架を切って奇跡的に
火を沈めたという場面が描かれています。このボルゴの火災は、唯一この間でラファエロが構図から全て
手がけた作品で、それ以外の作品はラファエロの指示のもとで弟子たちが手掛けました。

中央の奥に見える建物は、ラファエロがこの作品製作時に現存していた旧サン・ピエトロ大聖堂です。

左手には、ローマ建国の祖先となったといわれるギリシャ神話の登場人物アイネイアスが、トロイ滅亡後、
父アンキセスを背負い、幼いアンカニウスの手を引いて、燃える都から脱出する様子を題材にしています。

バロックの巨匠ジャン・ロレンツォ・ベルニーニが、この作品の影響を受けて製作した
「アエネス、アンキセスとアスカニウス」という作品がボルゲーゼ美術館で見ることができます。

ラファエロの間の見学後は、システィーナ礼拝堂への表示に従って階段を下りていきます。
システィーナ礼拝堂に着くまでには、ボルジア家の間(Appartamento di Borgia) ‐ 現代宗教美術コレクション(Collezione Arte Contemporanea)を通っていくので、
約15分ほどかかります。

 

システィーナ礼拝堂 (Cappella Sistina)

システィーナ礼拝堂は、ローマ教皇を選出する「コンクラーヴェ」の会場として使用されています。
礼拝堂の壁画は、盛期ルネッサンスを代表するボッティチェッリ、ピントゥリッキオ、
ペルジーノなどによって描かれており、天井画と祭壇画は、ミケランジェロが手掛けています。

天地創造

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天井画の製作には1508年から4年の歳月が費やされ、助手を使わず首をそらせた辛い体勢のまま、
ミケランジェロ単身で仕事をしたといわれています。

460平方メートル(40mx13m)の天井中央部分には、「旧約聖書」に記された「創世記」の
「光と闇の分離」、「太陽、月、植物の創造」、「大地と水の分離」、「アダムの創造」、
「エヴァの創造」、「原罪と楽園追放」、「ノアの燔祭」、「大洪水」、「ノアの泥酔」の
9つのエピソードが描かれています。

最後の審判

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「最後の審判 (Giudizio Universale)」は、1533年~1541年に制作されています。
1370㎝x1200㎝という非常に大きな壁には、キリストが手をかざして
人々の生前の行いを裁いているところが描かれており、神聖を示す右手を罪人へ、
不浄を示す左手を祝福する者たちへと、通常の概念から左右逆に描かれています。

この作品には新旧約聖書のほか、ダンテの神曲やマルティン・ルターなどの異教的思想が
影響していると推測されます。作品の中には裸体の人物が多数で描かれており、完成後、
異教的であるという批判を受け、画家ダニエレ・ダ・ヴォルテッラによって
44か所に衣服が付け足されました。

また、ミケランジェロは自分の自虐的な自画像を、キリストの右下に位置する
聖バルトロマイが手に持つ剥がされた皮に浮かぶ顔として描いたといわれています。

完成から現在まで何度も修復が繰り返されおり、色鮮やかなフレスコ画が見れる反面、
ミケランジェロの技法による微妙な表情などが失われてしまったいう批判も受けているようです。

ミケランジェロの3作品がローマで無料で見れる場所を紹介している記事へ 

 

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システィーナ礼拝堂見学後は、サンピエトロ大聖堂に続く通路を通らずに、順路に沿って
バチカン美術館内を歩いていくと、バチカン図書館へ続きます。

実際には、100万を超える蔵書コレクションがある美しいバチカン図書館への入場はできず、
数部屋に渡って続く十字架やコイン、装飾の一部など、キリスト教に関わる品々が展示されている
キリスト教美術館を見学しながら出口へと向かいます。

出口(USCITA)表示に従って進みましょう。

もし時間や体力が余っていれば、見学開始地点に戻ってピナコテカを見学する事も可能です。

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バチカン美術館では、展示室の間の随分長い廊下を歩いてきましたが、
展示室を結ぶ通路は7km以上もあるので、かなりの距離を歩いて美術館を見学してきたんです。

お疲れさまでした。

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美術館内で迷って、システィーナ礼拝堂へたどり着けなかったという話を聞いたことがありますが、
美術館の表示には必ず「Cappella Sistina」とシスティーナ礼拝堂への表示が至る所にされているので、
これを目印に進めば、まず間違いなく礼拝堂に到着するはずです。

関連記事:2日で廻るローマの観光スポット!の記事を読む

開館時間・入場料とアクセス方法

開館時間:9:00-18:00 (月~土曜日)
最終入場時間:16:00
休館日:日曜日
料金:大人:17 ユーロ / 小人:8ユーロ ( 公式サイトからの予約 €17 + € 4 予約料 )
無料見学:毎月最終日曜日 9:00-14:00 (最終入場時間 12:30)
アクセス:メトロA 線 Ottaviano下車

美術館を効率よく見学する方法

オンラインでチケットを購入して、入館日時を予約しておくことができます。
これで、列に並ばずに美術館に入ることができます。ヴァチカン美術館などの人気のある美術館は、
混んでいるときは、1時間半以上の列に並ばなくては中に入ることができません。

時間の限られた旅行日程の中で、より多くのものをスムーズに見学するには、
オンラインからチケットの事前購入をお勧めします。

 

無料見学日について

5月のハイシーズンの見学無料の最終日曜日に行ってみました。

美術館の開館する10分前8:55に行ってみると、列はサンピエトロ広場の手前まで伸びていたので、
ええ!! どのくらい並ぶのかな~と心配しましたが、開館後、意外と列がすいすいと進み
1時間10分ほどの待ち時間で入れました。

早くいけば列に並ばない?

いえ、早く行っても美術館は9時開館なので7時や8時から並ぶわけだから、
結局1~2時間は並ぶことになるので、開館時間に行って並ぶ方がいいと思います。

以前2月の最終日曜日の7時半にこの前を通った時は、リソルジメント広場の角まで来ていたので、
2時間待ち状況だろうな~と思って通り過ぎたことがあります。

平日の見学日でもこのくらい並ぶ日もあるので、無料見学に日程の日に見学を迷っているなら、
今回紹介したコースなら十分に見学できるので、最終日曜日の午前中を潰して無料見学する価値は
あると思います。

 

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