過去の歴史上、迫害や差別によりユダヤ人には困難な時代が続いたにもかかわらず、
プラハのかつてゲットーとされた「ヨゼフォフ(Josefov)」の規模は東欧最大といわれています。
現在、このヨゼフォフ地区では16~17世紀に創設されたシナゴーグや墓地などが博物館となって、
ユダヤ人の風習や歴史を見学することができます。
このページでは、プラハ歴史地区の一部としてユネスコの世界遺産に登録されている、
ユダヤ人街「ヨゼフォフ」のユダヤ博物館の内容やチケットの種類などを紹介しています。
シナゴーグとは?
シナゴーグとは、「会堂」という意味を持っており、ユダヤ人の礼拝の場であり、結婚式や葬儀の場、
教育の場、人々が議論を交わした集会所や裁判の場ともなったところです。
バビロン捕囚期に神殿を失ったユダヤ人は、異文化の中で暮らす自分たちの文化と安息日を保つために、
ユダヤ人の住む各地に会堂を建てました。
日本ではあまり馴染みがありませんが、ヨーロッパの街にはユダヤ人の祈りの場である
シナゴーグが多く見られます。
全てのシナゴーグは、会衆がエルサレムの方角を向いて座るように造られています。
ユダヤ博物館のチケットの購入場所と見学場所について
各見学場所にチケットオフィスがあるので、どこでもチケットを購入できますが、
クレジットカードに対応していない場所もあるので、現金のみの支払いになります。
カードを使用したい場合は、博物館のインフォーメーションセンターで購入することができます。
チケットの種類と見学できる場所
♦JEWISH MUSEUM IN PRAGUE (共通券)
料金:大人:CZK 400/小人6~15歳・学生26歳以下CZK300
マイゼルシナゴーク/ピンカスシナゴーク/旧ユダヤ人墓地/
クラウゼンシナゴーク/葬儀の家//スペインシナゴーグ
♦PRAGUE JEWISH TOWN(共通券)
料金:大人:CZK 550/小人6~15歳・学生26歳以下CZK400
マイゼルシナゴーク / 旧新シナゴーグ/ピンカスシナゴーク / 旧ユダヤ人墓地 / クラウゼンシナゴーク/スペインシナゴーグ/葬儀の家
♦OLD NEW SYNAGOGUE-旧新シナゴーグ(single ticket)
料金:大人:CZK 220/小人6~15歳・学生26歳以下CZK15
★チケットには、小さな地図とWi-Fi接続のパスワードが記載されているのでお見逃しなく!
マイゼルシナゴーグ
マイゼルシナゴークは、ゲットーの文化や経済が最も発展した黄金時代の16世紀後半に建てられた
シナゴーグです。
何度か改装される間に建築スタイルも変化してしまい、現在はネオゴシック様式になります。
ユダヤ民族の象徴であるダヴィデの星が、入り口の屋根上や窓ガラスの装飾にみられます。
建物の内部はベージュを基調に草色と金色の落ち着いた装飾が施され、ヨゼフォフ地区のユダヤ人の
歴史についての展示がされています。
窓には教会とは全く違った、左右対称の幾何学模様のステンドグラスがみられます。
ユダヤ教は、偶像崇拝を禁止されていることが内部の装飾にも見られます。
マイゼルシナゴーク [Maiselova synagoga ]
場所:Maiselova 10, 110 00 Praha 1
ピンカスシナゴーグ
16世紀半ばに建てられたピンカスシナゴーグは、プラハで2番目に古いシナゴーグです。
白い壁には、ナチス・ドイツに殺害された約8万人のユダヤ人の名前や生没月日などが
細かく手書きされており、建物の1階と2階の壁が隙間なく埋められています。
2階にはテレジン強制収容所で、ユダヤの子供たちが描いた絵などが展示されていて、
とても複雑な気持ちになりました。
外側の壁には、死の強制収容所へ送られた過去の記録など各都市で起きたユダヤ人の悲惨な歴史について
展示されています。
ピンカスシナゴーク [Pinkasova synagoga]
場所:3, Široká 23, Josefov, 110 00 Praha-Praha 1
ピンカスシナゴークの出口から旧ユダヤ人墓地へと入ります。
旧ユダヤ人墓地
旧ユダヤ人墓地 [Starý židovský hřbitov]
墓地に入るとまず驚くのが、倒れかかった墓石が所狭しと重なってたっていることです。
ヨーロッパの各地や日本で見る墓所とはかなり違います。
こちらは、15世紀後半から18世紀後半までにゲットーの中に造られた旧ユダヤ人墓地で、
当時、土地の拡大が許されずお墓をたてる場所がなかった為、こういう形になったそうです。
先祖を敬うユダヤ人は、古い墓を壊さずに墓石の上に土をもって新しい層を作り、
その上に墓を建てるという事を繰り返していきました。
その結果、場所によっては10層以上にも重なった部分があると考えられています。
1万2千ほどの墓石が置かれた旧ユダヤ人墓地には、ゴーレム伝説を生んだ「ラビ・レーヴ」をはじめとする、約10万人のユダヤ人が眠っていると言われています。
また、墓地の敷地を歩いていると、墓石の上に小石が乗せられているのが見られます。
これはユダヤ教のお墓参りの儀式で、死者や先祖に敬意を示し小石を置いていきます。
スティーヴン・スピルヴァーグの映画「シンドラのリスト」の最後のシーンにも出てきます。
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クラウゼンシナゴーグ
クラウセンシナゴーグは、旧ユダヤ人墓地を出るとすぐ右手に入り口があります。
17世紀後半に建てられたシナゴーグで、建物の中には家具や小物などが展示され、ユダヤ民族の生活の
様子を垣間見ることが出来ます。
各建物の入り口やドアなどにみられるダヴィデの星が、ステンドグラスにも見られます。
クラウゼンシナゴーク [Klausová synagoga ]
場所:1, U Starého hřbitova 39, Josefov, 110 00 Praha
葬儀の家
葬儀の家[ Obřadní síň]
旧ユダヤ人墓地を出て左手にあるのが、葬儀の家です。
名前通り葬儀が行われた場所で、死体の安置所ともなっていた建物です。
スペインシナゴーグ
スペインシナゴーク [Španělská Synagoga]
場所:U Staré školy 141/1, 110 00 Praha 1-Staré Město
古いシナゴーグがあった場所に、スペインのアルハンブラ宮殿を参考にして19世紀半ばに建てられた
スペインシナゴーグ。
2021年まで修復工事だったので、残念ながら訪問時には見学できませんでした。
まとめ
ヨゼフォフのユダヤ人博物館、いかがでしたか?
ヨーロッパを旅していると、色々な都市にユダヤ人地区があり、シナゴーグが存在しますが、
中世のプラハは、ユダヤ人に好意的な王が続いたことが、彼らの経済や文化を大きく発展させ、
現在、東欧最大のユダヤ人地区を残すことに繋がったと思われます。
そして、ユダヤ人たちの文化や安息日を守る為には、
「ゴーレム伝説」が、なくてはならないものになったのでしょう。
使命を終えたゴーレムが泥人形に戻り、未だに旧新シナゴーグの屋根裏に眠っているといわれています。
恐ろしい凶悪なイメージのあるゴーレムは、ユダヤ人の守り神として伝えられたようですね。