ローマには、美術館へ行かなくても、カラヴァッジョの名画を無料で鑑賞できる教会があります。
カラヴァッジョの作品は、ローマ市内の教会や美術館に20点以上ありますが、
そのなかでもサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会、
サンタ・アゴスティーノ教会では、代表作を無料で見学できます。
この記事では、ローマで30年近く暮らす中で何度も訪れた経験をもとに、
無料で見られるカラヴァッジョ作品と教会の見どころ、アクセスを紹介します。
カラヴァッジョとは?

1571年にミラノ近郊で生まれたカラヴァッジョは、徹底した写実表現と大胆な明暗法によって、
バロック絵画を切り開いた画家です。
ローマで才能を認められ人気画家となる一方、短気な性格から度々トラブルを起こし、
34歳で決闘による殺人事件を起こしてローマから逃亡。
その後はナポリやシチリアなどを転々としながら名作を描き続け、1610年、
恩赦を期待してローマへ戻る途中、38歳で亡くなりました。
波乱に満ちた人生は作品にも色濃く反映され、強烈な光と影の表現や人物の感情を生々しく描く作風は、
多くの画家に大きな影響を与えました。
逃亡生活の中でも制作を続けた作品には、それまで以上に緊張感や、
人間の苦悩が表れているといわれています。

その後、カラヴァッジョはイタリアを代表する画家として高く評価され、
ユーロ導入前のイタリアの10万リラ紙幣には、肖像画と代表作が採用されました。
作風の特徴
徹底した写実主義
聖人や宗教画であっても理想化せず、市井の人々をモデルに、現実そのままの姿で描きました。
人間らしい表情や仕草まで細かく表現したことが、当時としては革新的でした。
光と闇の劇的な表現
暗い背景に強い光を当てて人物を浮かび上がらせる表現は、カラヴァッジョ作品最大の魅力です。
光によって視線を導き、緊張感や感情をより強く印象づけています。
庶民をモデルにした宗教画
聖母や聖人も理想化せず、庶民の姿で描いたことから、
当時は「神聖さに欠ける」と批判されることもありました。
しかし、その現実味あふれる表現は、後の画家たちに大きな影響を与えました。
バロック絵画の先駆者
強い明暗表現と迫力ある構図は、ルーベンスやレンブラント、ベラスケスなど
多くの画家へ受け継がれ、バロック絵画の発展に大きく貢献しました。
カラヴァッジョの作品が見れるローマの3つの教会
ローマで無料公開されているカラヴァッジョの代表作は、3つの教会で鑑賞できます。
どの教会もローマ中心部にあり、街歩きや観光とあわせて巡りやすい場所です。
パンテオンやナヴォーナ広場、ポポロ広場などを訪れる際は、ぜひ立ち寄ってみてください。
見学前に知っておきたいポイント
教会には昼休みがある
ローマの教会は、午前と午後で開館時間が分かれていることが多く、昼休みの間は見学できません。
閉館時間になると見学途中でも退出となるため、時間に余裕を持って訪れるのがおすすめです。
礼拝堂は寄付でライトアップできる
カラヴァッジョ作品が展示されている礼拝堂は薄暗く、そのままでは細部が見えにくいことがあります。
礼拝堂には「Offerta」と書かれた寄付箱が設置されており、1〜2ユーロ程度を入れると、
数分間ライトアップされます。光と影の表現をじっくり鑑賞したい方にはおすすめです。
教会は祈りの場なので静かに見学する
教会は観光地であると同時に、信者の方々が祈りを捧げる神聖な場所です。
静かに見学することを心がけましょう。
ざわざわしている場合などは、「Silenzio!(静かに)」と声をかけられることもあります。
混雑は比較的少なく、ゆっくり鑑賞できる
3つの教会はいずれも、美術館のように常に混雑しているわけではありません。
団体ツアーと重ならなければ、比較的落ち着いた雰囲気の中で作品を鑑賞できます。
私の経験では、朝よりも夕方の方がゆっくり見学できることが多いです。
サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会|聖マタイ三部作
パンテオンとナヴォーナ広場の間にあるサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会は、
カラヴァッジョの代表作「聖マタイ三部作」を無料で鑑賞できることで知られています。
左側奥のコンタレッリ礼拝堂には、「聖マタイの召命」「聖マタイの霊感」「聖マタイの殉教」の
3作品が並び、カラヴァッジョの劇的な明暗表現を一度に楽しめます。
私も何度も訪れていますが、美術館のような混雑は少なく、静かな空間で
作品をゆっくり鑑賞できるお気に入りの教会です。
礼拝堂は寄付によるライトアップができるので、光と影のコントラストをよりはっきり見ることができます。
聖マタイの召命
「聖マタイの召命」は、カラヴァッジョを一躍有名にした代表作です。
収税人だったマタイにイエスが「私に従いなさい」と声をかける場面を描いています。
画面右上から差し込む光がマタイを照らし、イエスの呼びかけの瞬間を劇的に演出しています。
強い光と影による表現は、カラヴァッジョを象徴する技法として知られています。
聖マタイの霊感
「聖マタイの霊感」は、最初に描かれた作品が依頼者に受け入れられず、描き直された第2作目です。
当初の作品では、天使が聖マタイの手を取って導くような姿が描かれていましたが、
現在展示されている作品では、天使は少し離れた場所から霊感を授ける姿に変更されています。
なお、最初の作品「聖マタイと天使」は第二次世界大戦で焼失し、現在は見ることができません。
聖マタイの殉教
「聖マタイの殉教」は、説教中の聖マタイが刺客に襲われる場面を描いた作品です。
混乱する人々の姿が生々しく描かれていますが、中央左奥には、
この場面を見つめるカラヴァッジョ自身の自画像も描かれています。
窓から差し込む自然光と作品の明暗表現が重なることで、
礼拝堂全体が一つの舞台のような雰囲気になります。
光と影の強いコントラストを使ったこの3部作は、
窓から射し込む自然の光に照らされることによって、より劇的なシーンを生み出しています。
サンタ・マリア・デル・ポポロ教会|「聖ペトロの磔刑」と「聖パウロの回心」
ポポロ広場にあるサンタ・マリア・デル・ポポロ教会は、それほど大きな教会ではありませんが、
カラヴァッジョ、ラファエロ、ベルニーニなどルネサンスからバロックを代表する芸術家の作品が集まる、
小さな美術館のような教会です。
カラヴァッジョの作品は、チェラーシ礼拝堂にある「聖ペトロの磔刑」と「聖パウロの回心」の2点。
礼拝堂の中央にはライバルでもあったカラッチの祭壇画「聖母被昇天」が置かれ、
同時代を代表する二人の画家の作品を一度に見比べることができます。
こちらも礼拝堂は寄付によるライトアップがあり、光と影の迫力をより鮮明に鑑賞できます。
一人がコインを入れると、その場にいる人みんなが明るい状態で作品を楽しめるので、
タイミングが合えばそのまま鑑賞できることもあります。
聖ペトロの磔刑
「聖ペトロの磔刑」は、使徒ペトロが自ら望んで逆さ十字架にかけられる場面を描いた作品です。
暗い背景の中から人物だけが浮かび上がるような構図は、カラヴァッジョならではの表現です。
十字架を持ち上げる人物の足の汚れや力の入った腕まで細かく描かれており、
十字架の重さが見る人にも伝わってくるほどの迫力があります。
聖パウロの回心
「聖パウロの回心(右)」は、キリスト教徒を迫害するためダマスコへ向かう途中、
突然まばゆい光に包まれ、回心する場面を描いた作品です。
画面いっぱいに描かれた馬と倒れたパウロは非常に印象的で、
強い光によって神との出会いの瞬間が劇的に表現されています。
実はこの作品には第一作がありましたが、教会側に受け入れられず、
現在展示されているのは、描き直された第二作目です。
サンタ・アゴスティーノ教会|ロレートの聖母
ナヴォーナ広場から徒歩数分の場所にあるサンタ・アゴスティーノ教会は、
ラファエロとカラヴァッジョの作品を無料で鑑賞できる教会です。
教会内は落ち着いた雰囲気で、観光客が集中することも少なく、作品をゆっくり鑑賞できます。
パンテオン周辺を散策する際にも立ち寄りやすい場所です。
ロレートの聖母
「ロレートの聖母」は、巡礼者の前に裸足の聖母マリアと幼子イエスが姿を現す場面を描いた作品です。
当時の宗教画では聖母や聖人は理想化して描かれるのが一般的でした。
しかしカラヴァッジョは、庶民をモデルに現実の人間として描いたため、大きな議論を呼びました。
作品の前に立つと、巡礼者の汚れた足や質素な服装、飾り気のない聖母の姿など、
写実的な表現に目が引かれます。
これまで紹介した「作風の特徴」が、そのまま作品の中で感じられる一枚です。
聖母のモデルは、カラヴァッジョが恋した娼婦
マッダレーナ・アントニエッティだったとも伝えられています。
また、ボルゲーゼ美術館にある「聖アンナと聖母子(蛇の聖母)」にも、
どこか共通する雰囲気を見ることができます。
美術館で見られるカラヴァッジョ作品
教会で無料公開されている作品を鑑賞したら、
次は美術館でカラヴァッジョの代表作をじっくり鑑賞してみませんか。
ローマには、初期作品から晩年の傑作まで所蔵する美術館があり、
教会では見られないカラヴァッジョ作品にも出会えます。
ボルゲーゼ美術館|初期から晩年までの代表作
ボルゲーゼ美術館には、カラヴァッジョの代表作が数多く所蔵されています。
* 病めるバッカス
* ゴリアテの首を持つダヴィデ
* 執筆する聖ヒエロニムス
* 聖アンナと聖母子(蛇の聖母)
特に「聖アンナと聖母子(蛇の聖母)」は、サンタ・アゴスティーノ教会の「ロレートの聖母」と
見比べると、庶民的な聖母像という共通点も感じられます。
カラヴァッジョ作品だけでなく、ベルニーニの代表的な彫刻も展示されているため、
美術ファンには見逃せない美術館です。
カピトリーニ美術館|初期作品を鑑賞
世界最古の公共美術館のひとつとして知られるカピトリーニ美術館では、
カラヴァッジョの初期作品を鑑賞できます。
* 女占い師
* 洗礼者ヨハネ
美術館は、ミケランジェロが設計したカンピドリオ広場を囲む建物にあり、
古代ローマ彫刻やルネサンス、バロック絵画など見どころも豊富です。
バルベリーニ宮(国立古典絵画館)|名作と宮殿建築を楽しむ
バルベリーニ宮(国立古典絵画館)では、カラヴァッジョの傑作をはじめ、
ルネサンスからバロックまで幅広い作品を鑑賞できます。
* ホロフェルネスの首を斬るユディト
* ナルキッソス
* マッフェオ・バルベリーニの肖像
美しいバロック宮殿そのものが美術館になっており、ラファエロなどの名画に加え、
ベルニーニとボッロミーニが設計した2つの階段を見比べられるのも見どころです。
まとめ
ローマには、美術館だけでなく教会でもカラヴァッジョの名画を無料で鑑賞できる場所が数多くあります。
今回ご紹介した3つの教会では、光と影が生み出す劇的な表現や、
人物を写実的に描いたカラヴァッジョならではの世界を間近で楽しめます。
作品を見る前に少し背景を知っておくと、教会での鑑賞がより印象深いものになるでしょう。
パンテオンやナヴォーナ広場、ポポロ広場を散策する際は、ぜひ教会にも立ち寄り、
ローマの街に溶け込む名画を楽しんでみてください。
さらにカラヴァッジョの作品をじっくり鑑賞したい方は、ボルゲーゼ美術館やカピトリーニ美術館、
バルベリーニ宮へ足を延ばしてみるのもおすすめです。
ローマの街を歩きながら、教会と美術館の両方でカラヴァッジョの世界を楽しんでみてください。
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あわせてこちらの記事もぜひご覧ください。
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