ミケランジェロという名前は、美術に興味のない人でも一度は耳にしたことがあると思います。
そして、ローマを訪れた人が必ずと言っていいほど目にするミケランジェロの傑作が、
バチカン美術館内にあるシスティーナ礼拝堂の2作のフレスコ画とサンピエトロ大聖堂内にある
「ピエタ像」ですが、ローマでは、このほかにもミケランジェロの作品を無料で見学できる場所があるので、
そのうちの3作品を紹介します。
ミケランジェロって誰?
ミケランジェロ・ブォナローティ(Michelangelo Buonarroti 1475~1564年)は、
レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロと並ぶルネサンスの三大巨匠の1人で、主にフィレンツェ、
ローマで活躍した天才彫刻家、画家、建築家です。ミケランジェロの非常に迫力のある
スケールの大きな仕事ぶりは、存命中から天才芸術家として高い評価を得ています。
ミケランジェロが本業として重視していた彫刻分野で最も有名な作品には、20歳代に手掛けた
サン・ピエトロ大聖堂の「ピエタ」(1498~1499年)とフィレンツェ・アカデミア美術館の
「ダヴィデ像」(1504年)の2作が挙げられます。そして、彼が軽視していた絵画作品では、
バチカンのシスティーナ礼拝堂の天井画「天地創造」と祭壇壁画「最後の審判」のフレスコ画2作が、西洋美術史に大きな影響を与えています。建築家としても活躍したミケランジェロの足跡は、
ローマのカンピドリオ広場やフィレンツェのラウレンティーナ図書館などにも見られます。
長寿88歳で生涯を閉じた天才芸術家ミケランジェロの私生活は、質素な生活を好み、
長い人生の中で1度も結婚することなく、孤独なものであったといわれています。
孤独な人生を送らせた原因の一つには、彼の気難しい性格が人を遠ざけたとも言われています。
ローマで無料で見れるミケランジェロの3作品
有名な芸術家の作品は、美術館や博物館、教会などで有料で見るのが当たりまだと思いがちですが、
ローマではミケランジェロやカラヴァッジョ、ジャンロレンツォ・ベルニーニ、ラファエッロなど
偉大な芸術家の作品を教会内や街の広場で無料で見ることができるんです。
今回紹介するミケランジェロの作品は、すべて教会の中にあります。
しかも、ローマの教会は他の都市と違って、入場料を支払わずに入場できます。
ピエタ
ローマを訪れた人は必ずと言っていいほど訪れるのが、サン・ピエトロ大聖堂。
このサン・ピエトロ大聖堂で見れるのが、「ピエタ像 (1497-1499 年)」です。
ピエタとは、イタリア語で「哀れみ・慈悲」を示します。
このピエタ像は、天才ミケランジェロ23歳の時の作品で、処刑後、
十字架から降ろされたキリストを膝の上に載せ、息子の死の悲しみに耐えている
若い聖母マリアが、とても美しく表現されています。
聖母マリアのまとった衣服は、大理石なのに布のような柔らかさが伝わってきます。
20年ほど前までは、まじかで観察できたピエタ像。
現在はしっかりとガードされ、離れた場所からしか見学できませんが、
聖母マリアの美しい表情を見ることができます。
ミケランジェロは、生涯で3体の「ピエタ像」を製作しており、
そのうちの2体は、未完成のままフィレンツェのドゥオーモ付属博物館とミラノの
スフォルツェスコ城博物館で見学することができます。
ピエタ像 [ Pieta ]
場所:サン・ピエトロ大聖堂 ( Basilica di San Pietro )
住所:Piazza San Pietro Città di Vaticano
アクセス:地下鉄 A線 : Ottaviano下車 (Battistini 行)
見学時間: 7:00-18:30 ( 10月 1日 – 3月 31日 ) 7:00- 19:00( 4 月1日‐ 9 月30日)
公式サイト
モーゼ像
コロッセオに近いチェリオの丘にある、サンピエトロ・イン・ヴィンコリ教会の中には、
ルネッサンスの傑作のひとつと言われる「モーゼ像 (1513-1515年) 」を見ることができます。
神から受け取った石板の「十戒」を手にしたモーゼ像の高さは、235㎝。
このモーゼ像は、 教皇ユリウス2世が生前にミケランジェロに依頼した自分の為の巨大な墓の
一部であり、合計44体の彫像が飾られる予定でしたが、サンピエトロ大聖堂の建設と重なり、
墓のプロジェクトは何度も変更された後、製作を中止させてしまいます。
その時点で完成していたのが、霊廟の一部となるこのモーゼ像と2体の奴隷像。
現在、奴隷像は、フィレンツェのアカデミア美術館とパリのルーブル美術館に展示されています。
コインとを入れるとライトアップするので、たくましいモーゼ像を鑑賞できます。
教皇ユリウスⅡ世の霊廟の最初のプロジェクトが開始されたのは、1505年。
それ以降、何度も縮小変更され、6度目の製作プロジェクトまで40年の年月が費やされ、
最初の依頼人、教皇ユリウスⅡ世の死後に完成しました。
霊廟の下段中央には、モーゼ、左右に旧約聖書の登場人物ラクエル(左)とリア(右)
モーゼの上には、教皇ユリウスⅡ世と幼子イエスを抱える聖母像、上段左に巫女と右に預言者が
配置されており、方角を変えて見学すると、彫像の表情に変化が見えるように製作されています。
このモーゼ像は、完成25年後に宗教的な理由により、ミケランジェロ自身によって、
目線を変更するために頭の角度が帰られています。
完成してから25年もたって大理石の頭の角度を変えることができたのは、
天才ミケランジェロだけだったといわれます。
ミケランジェロのモーゼ像が潜む「サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会」の記事を読む
モーゼ像 [ Mosè ]
場所:サンピエトロ・イン・ヴィンコリ教会 ( Basilica di San Pietro in Vincoli )
住所:Piazza San Pietro in Vincoli 4/a Roma
見学時間:8:00~12:30/15:00~19:00(4月1日~9月30日)、8:00~12:30/15:00~18:00(10月1日~3月31日)
アクセス:地下鉄B線 Cavour、バス 75、117
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あがないの主イエス・キリスト像
パンテオンの近くにある、ローマでは唯一のゴシック様式の教会、
サンタ・マリア・ソープラ・ミネルヴァ教会の中に、ミケランジェロによる
「あがないの主イエス・キリスト像 (1519 – 1520年) 」
(「ミネルヴァのイエス・キリスト像」ともいう)があります。
あがないの主イエス・キリスト像は、カラーラ産の1つの塊の大理石を掘って造られた、
高さ205cmの大型彫刻です。完成時のキリストは全裸だったのですが、
教会に置く彫像としてふさわしくないとされ、
他の芸術家によって、ブロンズで布が付け足されたそうです。
ミケランジェロの作品であると知らなければ通り過ぎてしまうほど、
柵やガラスの囲いもなく中央祭壇の左側に配置されています。
ローマの教会は芸術の宝庫!サンタ・マリア・ソープラ・ミネルヴァ教会の記事を読む
あがないの主イエス・キリスト像 [ Cristo della Minerva ]
場所:サンタ・マリア・ソープラ・ミネルヴァ教会 ( Basilica di Santa Maria sopra Minerva )
住所:Piazza della Minerva 42
見学時間:月~日曜日 8:00~19:00
アクセス:バス 62、63、83、85、160、492、628 Corso/Minghetti
サンタ・マリア・ソープラ・ミネルヴァ教会 公式サイト
まとめ
長く住んでいると、毎日見ているローマの街並みが当然のものとなってしまい、重要な遺跡や噴水を
見ても感動することもなくなっていましたが、このページを書いているうちに、
自分の生活する身近な場所に、歴史的重要建築物や偉大な芸術家の傑作がある事を実感しています。
ローマを訪れた時は、速く移動できるだけの地下鉄を利用せず、できるだけ自分の足で歩いてみてください。
きっと、今までに見られなかった感動の景色に出会うことができると思います。